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「よく死ぬことは、よく生きることだ」という本を読んで

千葉敦子さんというジャーナリストが、がんと闘い、死と向き合いながら、一日一日をよりよく生きようとした生き方をたんたんと冷静につづった本です。
出版社は文藝春秋。デマ報道で有名な雑誌を抱える出版社ですが、たまにはいい本を出すのだと感心しました。

私がこの本を手にしたのは、10年ぐらい前のことです。
そのとき、パラパラっとめくって通読してから、ずっとほこりをかぶっていた本ですが、最近、ふとこの本を思い出し、もう一度読んでみようと思いました。
その背景には、自分自身の人生を何か大きな目的のために捧げる生き方を決意してからというもの、「自分の死ぬときまで、自分はこのように生きていこう」という思いが強まってきたからだと思います。

東洋の哲学にも、「まず死のことをよく学んでから、生きることを学びなさい」という趣旨の言葉があります。
また、あるカウンセラーの方の話を聞いたときに、痛烈に覚えている話があります。
それは、おおよそこういう話です。
「人間は、60歳、70歳とだんだん、寿命に近づいていくに従い、その人のそれまでの生き方が『充実と喜び』が多いか、あるいは『後悔と苦しみ』が多いかを自覚し始める。
そして、前者が多い人は、死に対してなんの恐れもなく、幸せに死んでいける。
しかし、後者が多い人は、死が近づくにしたがって、死に対する恐怖がどんどんふくれあがり、後悔と苦しみに恐れおののいて、恐怖にひきつりながら死を迎える」

私は、もちろん前者の生き方でありたいと思います。
脳というのは、ふだんは記憶を封印しています。
それゆえに、思い出すと苦しい記憶を無意識のうちに封印してしまって、苦しまずにすむのです。
しかし、死の直前、記憶を封印している脳の機能が停止し、生きているときの記憶がすべて蘇るといいます。

そして、何を喜びと感じ、何を苦しみと感じるかというと、人に喜びを与えた記憶は自分自身に大きな喜びを与えます。
逆に、人を傷つけたり苦しめたりした記憶は、自分自身に苦しみを与えます。

こうした心理学や、大脳生理学の成果は、東洋の哲学にも相通ずるものがかなりあると思います。
冒頭の本の著者は、これらの心理学や大脳生理学を知っていたわけではないように思いますが、しかし、知らなくても、心理学や大脳生理学のうえで、充実した死を迎える方法を実践されていました。
これはすごいことだと思いました。
まして、こういう知識を知っていながら、それを役立たせることを自分ができなかったらあまりにも愚かな人間であるということになります。
そうした自戒も含めて、改めて強く思いました。
よく死ぬことは、よく生きることなのだ、と。

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